「もし海外で思わぬ事故が原因で怪我をしたり、病気になったりしたら、海外ではどんな医療が受けられるのかな…?日本の医療制度とは違うのかな…?」
このように疑問に思う人もいると思います。
日本はとても医療制度が充実していて、医療技術や医療レベルも高い国の一つ。
でも海外の医療制度は、日本と違う点も多いです。
だから、日本の病院に行くのと同じ感覚で海外の病院へ行くと、びっくりすることもあるかもしれません。
そこで今回は日本とアメリカなど海外との医療の違いを国際比較。
それぞれの国の医療システムや医療事情を詳しく解説します。
海外旅行や留学中に現地の病院へ行くことになって、「日本ではこうだったのに…」と困らないためにも、ぜひ参考にしてください。
気になる医療費の自己負担についても紹介しています!
1. 日本と比べて海外での交通事故率は高い!
日本は海外と比べて、交通事故の発生率が低い国だということを知っていますか?
最近、高齢者の車の運転による交通事故が増えているとニュースで聞いたことがある人は、「え?そうなの?」と思った人もいるかもしれませんね。
では、試しに日本の国土交通省が調査した海外の交通事故による死者数をみてみましょう。
日本は人口10万人あたりの交通事故者数が3.8人という結果になりました。
アメリカは10万人あたり10.2人と、日本の約2.5倍で一番多いことがわかりますね。
これはあくまで交通事故による「死者数」なので、実際に起こっている交通事故はさらに多いと考えられます。
海外留学に人気な国であるカナダ、オーストラリア、ニュージーランドと比較しても、日本よりも交通事故による死亡数が多いですね。
事故の種類としては、日本は高齢者の歩行中の事故がとても多くなっています。
一方で、アメリカやイギリスなど欧米では、10代や20代の低年齢層による車の事故が多いという傾向です。
加えて気になるのが、殺人事件の発生率。
2015年の国連の調べによると、人口10万人あたりの殺人事件の被害者数が、日本は0.3人の発生率に対してイギリスでは0.9人、アメリカでは4.9人であることがわかりました。
アメリカの殺人事件の多さは、やはり銃社会であるということが大きく関係しています。
ちなみに、アメリカで銃によって死亡する事件数は、交通事故での死亡数とほぼ同じという結果です。
海外旅行や留学中にあなたも何かの事故や事件に巻き込まれる確率は、日本にいるよりずっと高いことがわかりますね。
海外へ渡航する場合は、海外向けの保険や海外の医療について事前に知っておくと、いろいろ心づもりもできるてより安心です。
2. 日本の医療制度との違いは?日本と海外の公的な医療制度を比較
海外の医療や医療制度について話す前に、日本の公的医療保険はなにかわかりますか?
会社員、つまりサラリーマンが入れるのは「健康保険(社会保険)」ですね。
健康保険は、知っている人も多いでしょう。
では、健康保険以外では、どんな公的な医療保険があるか知っていますか?
自営業の人が加入できる | 国民健康保険 |
---|---|
公務員や学校の先生が加入できる | 共済組合保険 |
船で働いている人が加入できる | 船員保険 |
75歳以上が加入できる | 後期高齢者医療保険 |
これらは全部、日本の公的医療保険にあたります。
そして、それぞれの医療保険制度は、組合や協会、自治体など地域によって運営されています。
海外の公的医療制度については、日本と似たような仕組みのものあれば、そうでないものもあり、保険の内容も千差万別。
つまり、日本では国民全員が公的な医療保険に加入することが義務付けられていて、多くの人が医療費3割の自己負担になっていますが、海外ではそうではないということです。
アメリカは国民みんなが受けられる公的医療制度がない国
それでは、海外の公的医療制度を日本のものと比較しながらみてみましょう。
【日本と海外の公的医療制度の比較】
国 | 制度の種類 | 対象 |
---|---|---|
日本 | 公的医療保険型 | 国民全員 |
アメリカ | 民間保険主導型 | 国民全員でない |
イギリス | 国民保健サービス型 | 国民全員 |
ドイツ | 公的医療保険型 | 国民の9割は公的医療保険 1割は民間保険でカバー |
フランス | 公的医療保険型 | 国民全員 |
デンマーク | 国民保健サービス型 | 国民全員 |
オランダ | 民間保険主導型 | 国民全員 |
オーストラリア | 国民保健サービス型 (民間保険積極活用) | 国民全員 |
韓国 | 公的医療保険型 | 国民全員 |
台湾 | 公的医療保険型 | 国民全員 |
まず、医療制度の種類ですが、日本のような仕組みの「公的医療保険型」と「国民保健サービス型」、そして「民間保健主導型」と3つのタイプがありますね。
イギリスが代表的な「国民保健サービス型」は、国が運営している公的医療制度になります。
「民間保険主導型」は、その名の通り民間の保険会社が運営している保険制度です。
アメリカとオランダは同じ「民間保険主導型」ですが、それぞれの違いは「制度の対象が国民全員かそうでないか」という点。
オランダの場合はどこかの民間会社の医療保険に入ることを国民みんなに義務付けていて、一定の医療費や薬代の補助がでます。
一方で、アメリカの場合は、低所得者と高齢者対象に公的医療保険(メディケアとメディケイド)はありますが、国民全員を対象した公的医療制度がないという訳です。
実は、先進国と呼ばれている国で、全国民を対象とした公的な医療保険制度がないのは、アメリカだけ。
ほとんどの国では、国民全員を対象とした国民皆保険の医療制度を実施していることがわかりますよね。
アメリカでは、実際なにも医療保険に加入してない国民が約15%もいて、長年アメリカの社会問題の一つになっています。
ここで紹介した各国の公的医療制度は、あくまで自国民が対象です。
なので、短期留学や旅行中に海外でもし医療機関にかかったときは、原則、医療費は全額自己負担になるので注意してください。
国や地域、ビザの種類や留学期間によっては、渡航して手続きをふめば加入可能な現地の医療制度があることも。まずはチェックしてみましょう。
3. 日本と海外の医療費の自己負担を国際比較!日本は諸外国より自己負担が少ない方
次に、日本と海外の医療費について解説します。
まずは現在の医療費に対する個人の自己負担比率を国別に示した表をみてください。
日本は国として抱えている医療費の負担が、高齢化社会や少子化が原因で、急速に増えていっているとニュースなどで言われているのを聞いたことがあるかもしれませんね。
ですが、個人一人ひとりの医療費負担をみてみると、今後はどうなるかわかりませんが、世界の国に比べてまだまだ少ないようです。
そして、アメリカは圧倒的に医療費の自己負担比率が高いのがわかります。
それではここから、各国の医療費の自己負担についてより詳しくみてみましょう。
次の表は、海外での公的な医療制度の自己負担についてまとめたものです。
国 | 公的医療制度の自己負担 |
---|---|
日本 | 基本、3割自己負担。 |
アメリカ | 任意加入している民間の保険プランによって異なる。 |
イギリス | 医療サービスすべて原則、自己負担なし。 薬は自己負担あり。 |
ドイツ | 外来自己負担なし。 入院1日10ユーロ、薬10%が自己負担。 |
フランス | 外来3割自己負担。 入院2割+別途1日定額負担。 薬35%が自己負担。 |
デンマーク | 医療サービスすべて原則、自己負担なし。 歯科、薬は自己負担あり。 |
オランダ | 一定の医療費を自己負担。 |
オーストラリア | 医療費の全部、または一部を負担。 歯科は保険対象外。 公立病院では無料治療。 |
韓国 | 外来は病院や地域によって自己負担率が3~6割と変わる。入院は原則2割負担。 |
台湾 | 外来は医療機関のレベルによって自己負担額は変わる。 |
1. アメリカは医療費が世界一!アメリカではお金がないと病人にもなれない?
前項でアメリカは医療費が高くかかる国だということはわかりましたね?
うん。でも、なぜこんなに高いんだろう?
その理由は大きく3つあると言われています。
これからそれを見てみましょう。
1. アメリカは全国民を対象とした公的な医療制度がないから
アメリカの医療費が高くなっている1つ目の理由は、やはり全国民を対象とした公的な医療保険制度がないということです。
そのために医療保険に未加入の人が多くいて、そういう人が実際に高い医療費を払うことができずに踏み倒してしまうこともめずらしくありません。
だから、こういった回収できない医療費を、払える人からなるべく補填しようと医療費を高めに設定しているということもあります。
また、日本は全国どこの病院で治療を受けても、治療費に大きな差はないですよね。
それは、国が全国で統一して定めている診療報酬制度や薬事法によって、医療費や薬代が決まっているからです。
しかし、アメリカには全国民を対象の国レベルで統一した制度がなく、病院や診療所ごとに決めることができます。
これにより、実際に病院を利用すると思いもよらない高額な医療費を請求されることもあります。
- ニューヨークで事故に巻き込まれ、ある病院に救急車で運ばれた。
とてもきれいな病院でサービスもよくて最高だったけど、医療費1,000万円を請求された。 - 子供が38度の熱があり、総合病院で診てもらったら8万円請求された。
こんなことが起こり得るのがアメリカ。
渡航中に事故で怪我や病気にあった場合、高額な医療費が請求されるのは決してめずらしいことではないのです。
2. アメリカでは医師になるまでの学費が高いから
2つ目の理由は、アメリカは日本と比べてお医者さんになるまで時間がかかり、学費がとても高いことです。
アメリカで医師になるには、まずどこかの大学を卒業して、その後にアメリカの医学部にあたる4年制のメディカル・スクールに入学しなければいけません。
日本では大学の医学部を6年間で卒業すれば、最短で24歳で医師になれますが、アメリカでは早くても約8年間はかかるということに。
そして、その間にかかるトータルの学費は、アメリカで一番安く医者になる方法の公立州立大学の場合でも約1,600万円かかるそうです。
一方で、日本の国立大学医学部の場合は、4分の1の約400万円ほど。
この高い学費のために、多くのアメリカの医学部生は、平均で約1,200万円という多額のローンを組んでいるとも言われています。
つまり、まず一人前の医師になったら、学生時代の高いローンを返さなければならないということ。
そのために、医療費を高くしなければいけないという訳です。
3. アメリカは医療訴訟も多いから
アメリカの医療費が高い3つ目の理由は、アメリカは訴訟大国だということ。
アメリカでは、日本では信じられないことでよく訴訟裁判になることが多いのは知っている人もいるかもしれませんね。
有名な話でいうと、マクドナルドのコーヒーをこぼして火傷したため訴えられた件や、マクドナルドのハンバーガーのせいで肥満になったと訴えられた件。
このように日本ではあり得ないような訴訟裁判が、アメリカの医療でも多く起こっています。
実際、アメリカの医療訴訟裁判は年間で約10万件と言われていて、これは日本の約100倍以上という多さです。
もともとの資本主義を重視してきた国の歴史やこのような理由から、アメリカの医療サービスは日本と比べてよりビジネスライクと言えます。
アメリカでは、お金が沢山あればよりよい病院で診てもらえ、よりよい医療サービスが受けられるでしょう。
でも、逆に十分なお金がないと病院にも行けなくなってしまう、満足した治療が受けられないかもしれないとも言えるかもしれませんね。
シビアだね…
2. イギリスは医療費無料だけど待ち時間が長い!
イギリスやデンマークなどは医療費の外来での窓口負担がゼロなので、3割自己負担の日本人にとっては羨ましい話のように思いますよね。
ちなみに、イギリスの医療費無料の制度は、第二次世界大戦後の「ゆりかごから墓場まで」という国の医療福祉に対する政策方針がもとになったものです。
「ゆりかご」とは生まれたときから、「墓場」は死ぬまでの意味。
つまり、生まれてから死ぬまでの一生を国が守って保障する仕組みを作ろう、という政策だった訳です。
医療費の自己負担がないということは、国民にとって嬉しいことだと思いますが、その反面やはりデメリットも。
ここでは、医療費を無料にしている医療システムとそのデメリットを説明しています。
1. イギリスなど欧米の医療システムはホームドクター制
イギリスやアメリカなど、日本以外の多くの国では「ホームドクター制」という医療システムになっています。
それに対して、日本は「フリーアクセス制」。
日本だと病気や怪我をしたら、患者さんの医師で開業医がいる病院、総合病院、大学病院のどれにかかるかは、自分の意思で選ぶことができますよね。
しかし、ホームドクター制の場合は、まずは地域のかかりつけ医に診てもらわなければいけないという仕組みです。
日本も最近では、まず地域の開業医をかかりつけ医として診てもらうというように推奨はされていますが、義務付けられている訳ではありません。
国 | 病院の選択 |
---|---|
日本 | フリーアクセス制 |
アメリカ | ホームドクター制 |
イギリス | ホームドクター制 |
ドイツ | ホームドクター制 |
フランス | フリーアクセス制 |
デンマーク | ホームドクター制 |
オランダ | ホームドクター制 |
オーストラリア | ホームドクター制 |
韓国 | フリーアクセス制 |
台湾 | フリーアクセス制 |
以下は、医療費無料のイギリスのホームドクター制と日本のフリーアクセス制を図で表したものです。
上の図をみると、ホームドクター制の国では風邪を引いたり体調を崩したら、病院でなくまず薬局に行くのがわかりますね。
これは、アメリカも同様で、ちょっとした風邪などではめったに病院へは行きません。
イギリスや北欧では、薬局でだしてもらった薬でも治らなかったら、次は看護師さんに診てもらいます。
この看護師さんは「ナース・プラクショナー(上級看護師)」という資格を持っていて、医師の許可なしにある一定の診断や薬の処方ができる看護師さんです。
看護師さんに診てもらっても治らなかったら、次は地域のかかりつけ医(総合医)に診てもらって、必要に応じて大学病院や専門医を紹介してもらう流れになっています。
2. イギリスは日本と比較して保険適用の治療に制限がある
前項でわかったように、イギリスなどの欧米でホームドクター制を取り入れている国では、段階を踏んでからしか、お医者さんに診てもらうことができないのはわかりましたよね。
ホームドクター制を導入している国、とくにイギリスやオランダ、デンマークなどではかかりつけ医(総合医)の登録がすでに国民に義務づけられています。
イギリスやデンマークは、医療費を国民の税金ですべて補わないといけません。
なので、ホームドクター制度を徹底することでムダな医療費を抑えようとしている訳です。
ちなみに、イギリスやデンマークの病院のほとんどは公立病院。
医師もイギリスではすべて准公務員で、日本のような自由開業はできません。
かかりつけ医(総合医)も、国によって一定の地域ごとに一人ずつしか配置されないルールになっていています。
つまり、日本の開業医のように自分の好きな場所で診療所を作ることもできないのです。
また、医療費を抑えるために、日本では保険適用で受けられる治療がイギリスでは適用外になっていたりと、日本と比べて保険医療に対する制限が多いというデメリットも。
実際、イギリスの富裕層では、インドなど海外へ医療ツアーで治療を受けることも珍しくないようです。
※参考図書)『世界の医療保障 2013年』
3. イギリスでは専門医に診てもらうまでの時間がとても長い
このような日本にはない制限のもとで、イギリスやデンマークでは専門医に診てもらうまでに、待機期間が1ヶ月や2ヶ月ということが普通になっています。
「なにか悪い病気だったら…できれば、すぐに専門医に診てもらいたい」と思っているのに、1ヶ月、2ヶ月待つのは心配ですよね。
ようやく大学病院で診てもらえることになっても、患者さんが集中しているので、診察までの待ち時間が5時間なんてことも珍しくありません。
これが、医療費無料の医療制度を行なっているイギリスの現状のようです。
最近では日本の大学病院でも、2時間待たせれて診察は2分だったとか患者さんの不満があるようですが、5時間待ちのイギリスと比べるとまだまだというところなのでしょうか。
ちなみに、デンマークでは、2007年にこの待機問題の解消のために、4週間以内に専門医に診てもらえない場合、県外や国外で治療を保険適用で受けてもいいようになりました。
それでも遠くの病院に通うのは大変ですよね。
イギリスでもすぐに大きな病院で診てもらうことはできますが、その場合は基本的に医療費が自己負担になるようです。
イギリス人はみんなそんなに診察まで待たされて不満はないのかな?
長い時間待たされても、やっぱり医療費が無料というメリットが強いのか、そんなに大きな不満はないようです。
3. ドイツの医療費は少なめ!日本人も利用しやすいのが特徴
ドイツは外来の場合、保険に加入していれば自己負担はありません。
入院すると1日10ユーロ、薬は10%が自己負担となります。
100%無料ではないものの、他の国に比べて医療費の負担が少ないのがドイツの特徴です。
また、「もしヨーロッパで病気になるなら、ドイツかフランスで病気になりなさい」とよく言われます。
ドイツ人は、日本人と似ていて真面目な性格だと言われており、外国の病院に行くのが怖いという日本人でも利用しやすいのです。
そして、ドイツの医療はヨーロッパの中では高いレベルになります。
ドイツの医療システムは、ホームドクター制ですが、かかりつけ医の登録はイギリスのように義務化されておらず任意です。
その点においても、日本と似ていると言ってもいいかもしれません。
(ただし、90%の国民が任意でホームドクターを登録しています)
しかし、外国人は保険に加入していなければ医療費は全額負担となりますので、旅行の際は海外旅行保険に必ず加入しておきましょう。
フランスは、日本と同じフリーアクセス制なので、日本で病院にかかる感覚と近いかもしれませんね。
病気や怪我になったら、とりあえず近くの病院に行くと対応してもらえるでしょう。
ただし、ヨーロッパ、とくにフランスでは、夏休みに医師が長期休暇をとることがめずらしくありません。
フランス人の夏休みのバカンスは、医師に限らずフランス人の国民的慣習になっているからです。
日本では長期休暇といってもせいぜい1週間程度ですが、フランスでは1ヶ月ということも。
1ヶ月のバカンスなんて羨ましいなぁ。
そうですね。
でも、フランスで倒れるなら、夏休みは避けたほうがいいかもしれないですよ!
そんな無茶な(笑)
4. 日本の医療レベルはアメリカなど海外と比較して低い?高い?
では、日本の医療レベルは、海外と比較して低いのでしょうか?高いのでしょうか?
最先端医療の分野では、アメリカが一番と聞いたことはあるでしょう。
でも、日本の医療レベルもそこそこ高いだろうと実際感じている人が多いと思います。
以下は、世界的な医学雑誌「The Lancet」が発表した「Health Access and Quality」のランキングです。
これは、医療へのアクセスの良さや医療の質を、世界195カ国で比較したもので、日本は11位という結果でした。
国 | Health Access and Quality |
---|---|
日本 | 11位 |
アメリカ | 35位 |
イギリス | 30位 |
ドイツ | 20位 |
フランス | 15位 |
デンマーク | 24位 |
オランダ | 9位 |
オーストラリア | 6位 |
韓国 | 23位 |
台湾 | 45位 |
このランキングから、日本は医療機関での治療が受けやすく、医療の質も充実していることがわかりますよね。
実際に、日本で国民一人あたりが1年間でお医者さんに診てもらう回数は12.9回。
日本と同じフリーアクセス制の韓国では、さらに多い14.6回でした。
一方で、イギリスは5.0回、アメリカでは4.0回と日本の約半分以下という結果に。
日本ではどこか悪くなったら、自分ですぐ近くの病院に行けるもんね。
ちなみに、最先端医療に強いアメリカは意外に低いけど、これはどういうこと?
それについては、これから見てみましょう。
1. アメリカの最先端医療技術は世界一だが、日本の医療レベルも高い
アメリカが最先端医療技術で強いということは事実です。
というのも、アメリカは新しい医療技術や薬の治験に対して、日本と比べてとても積極的に行なっているから。
実際、日本で2016年に届けられた治験数が645件に対して、アメリカでは2018年度11月までですでに約10万件もの治験の登録がされています。
治験は、安全性が確立されていないというデメリットはどうしてもありますよね。
しかし、アメリカでは、医療保険に加入していない無保険の人でも無料で治験を受けることができるというメリットがあります。
つまり、幅広い人が最先端医療を受けられるチャンスがあるという訳です。
また、中小規模の病院が多い日本では、複数の病院に治験を頼まなければいけないので、どうしても治験を始めるのに時間がかかってしまいます。
一方で、アメリカは病院が集約されているので、一つの病院で治験が早く進められるという仕組みができているようです。
このように、アメリカの治験制度は確立されているので、最先端医療の技術発展において、日本は遅れをとっている面があることはいなめないかもしれませんね。
しかし、日本の医療レベルはアメリカと比較しても決して負けてはいません。
以下は、一般的に治療が難しいと言われている肺がんになった患者さんの5年術後生存率を示したものです。
肺がん患者の術後5年生存率 | |
---|---|
日本 | 30.1% |
アメリカ | 18.7% |
イギリス | 9.6% |
ドイツ | 16.2% |
フランス | ー |
デンマーク | 11.3% |
オランダ | 14.8% |
オーストラリア | 15.0% |
韓国 | 18.5% |
台湾 | ー |
アメリカを大きく上回って日本がトップ。
治療が難しいとされている肺がんに対する日本の医療技術は、他の国に比べて充実していることがわかりますね。
2. 日本の医療サービスは海外と比較するととても充実している
前項で日本の医療技術も負けてないと話しましたが、医療サービスの点でも日本はとても充実しています。
まずは、人間ドックなどの検診や病気になったときに欠かせない「CT」や「MRI」について。
以下は、人口100万人あたりのCTやMRIの設置台数を示したものです。
国 | CT設置台数 | MRI設置台数 |
---|---|---|
日本 | 101.3台 | 46.9台 |
アメリカ | 40.9台 | 31.5台 |
イギリス | 8.9台 | 5.9台 |
ドイツ | 18.3台 | 10.8台 |
フランス | 12.5台 | 7.5台 |
デンマーク | 29.3台 | 15.4台 |
オランダ | ー | ー |
オーストラリア | 44.4台 | 18.6台 |
韓国 | 35.9台 | 21.3台 |
台湾 | ー | ー |
日本では海外に比べて、CTやMRIがある病院を見つけやすく、何かあればすぐにCTやMRIで検査してもらえる環境にあると言えます。
逆にいうと、海外では早く検査して欲しいのになかなかしてもらえないとも言えますね。
ちなみに、医療費無料のイギリスはCTやMRIの設置台数が少ないので、検査を受けるために2、3ヶ月待たなければいけないということもあるようです。
次に日本の医療サービスが充実してる理由は、日本の病院は、海外と比較してより長く入院することができるということ。
日本の病院での入院日数は、世界一長いと言われています。
たとえば、急に病気や怪我になって急性期医療を受けるために入院した場合は、日本では平均17.2日の入院日数です。
これに対して、アメリカは6.1日、イギリスでは7.1日と日本の半分以下。
アメリカやイギリスの入院日数の短さは、ムダな医療費の負担を抑えるためという理由が一番大きいと考えられます。
しかし、実際傷がまだ治っていない、体調がまだ回復してないといった状態で退院させられた、そして後日再入院したという不安な現状も一方ではあるようです。
そういった面では、日本の病院は安心できますよね。
そしてもう一つ日本の医療サービスが充実している理由は、日本の看護師さんの、医療ケアだけでないホスピタリティー高さです。
日本の食事の配膳や、必要があればお風呂の介助など身の回りのお世話もしてくれますよね。
しかし、海外の看護師さんは基本的に医療ケアだけしか行わないので、日本の看護師さんと比べるとそっけなく感じることもあるかもしれません。
日本の医療ってやっぱり充実してるんだなぁ。
そうですね。
そこそこの医療費で、ある一定の高さの治療と医療サービスが受けられるし、病院にも行きやすい。
バランス的に見たら、日本の医療は一番と言えるかもしれませんね。
3. アジア圏で病気になったら日本に帰った方がよい
最後に、海外旅行や語学留学にも人気なアジア圏の医療についてみておきましょう。
以下は、医学雑誌「The Lancet」が発表した「Health Access and Quality」のランキングからピックアップしたものです。
国 | Health Access and Quality |
---|---|
日本 | 11位 |
シンガポール | 21位 |
韓国 | 23位 |
台湾 | 45位 |
ロシア | 57位 |
マレーシア | 66位 |
中国 | 82位 |
タイ | 88位 |
ベトナム | 93位 |
フィリピン | 120位 |
アジア圏では、日本がトップレベルの医療だということがわかりますね。
最近、英語留学でも人気のセブ島があるフィリピンは120位。
大国と言われているロシアや中国も、まだ日本の医療ほど充実してるとは言えないようです。
中国についは、日本では信じられないような医療ミスも度々おこっていて、実際、中国では年間40万人が医療過誤や薬の誤用で亡くなっています。
これを聞くと、中国ではなかなか現地の病院に行くにも勇気がいるかもしれませんね。
また、中国やロシアなどアジア圏から日本の高いレベルの医療を受けたいと、医療ツアーで日本に来る外国人も増えています。
この現状から考えて、もし日本以外のアジア圏で病気になったら、日本に帰ってから治療を受けるのが一番かもしれませんね。
そのとき、帰れる状態だったらいいけど…(汗)
※参考図書)『日本の医療、くらべてみたら10勝5敗3わけで世界一』
【まとめ】国が変われば医療も変わる!海外旅行や留学では補償が十分な保険を選ぼう
日本と海外の医療について比べてきましたが、いかかでしたか?
国によって医療制度や医療システムが違うこと、日本の医療はやっぱり充実しているんだなぁとあらためて感じた人もいるでしょう。
海外旅行中や留学中に、思わぬ事故で怪我をしたり、急に病気になったときは、日本とは違う医療サービスを受けることになることもわかったと思います。
「日本ではこうだったのに…」と不便に思うことも多いかもしれません。
逆に、「日本よりこれはいい!」と思うこともあるでしょう。
やはり、海外でもなるべく満足した医療サービスを受けるためには、十分な治療など補償をカバーしている海外向けの保険に入っておくことを忘れないようにしておいてくださいね!