海外旅行中は自己防衛の意識が強くなります。異国の地で警戒心を持つことは、日本人も外国人も同じです。街中でいきなり話しかけられることを怖いと思うのは、当然のことです。
最初の一言が少しでも間違った言い方で話しかけてしまうと、挽回が難しいです。
せっかく勇気を振り絞って話しかけた努力が無駄になるだけでなく、英語を話すことへの恐怖心さえも生まれるかもしれません。
そこで、今回は日本人が見落としがちなニュアンスの違いや文化の違いを見直し、気持ちよくコミュニケーションが図れるようになりましょう。
外国人旅行者に話しかける時
Are you traveling alone? 【ひとりですか?】
第一声が一人かどうかを確かめる質問だと、何か企んでいるように思われてしまいます。まずは当り障りのない質問をし、気軽に会話を始めましょう。
例
【旅行中ですか?】
Let me help you. 【私がお手伝いしましょう。】
困っている人を助けるのは良いことですが、親切心の押し売りは避けたいです。助けるかどうかをこちらが決めるのではなく、相手が助けを必要としているのかどうかを相手に確認することが大切です。
例
【お手伝いしましょうか?】
Do you have some time? 【お時間ありますか?】
これはあまりにも曖昧な質問であるため、所要時間が数分なのか、数時間なのかが分かりません。買い物に付き合ってほしい時に、友人に明日暇があるかどうかを確認するような会話では使用できますが、初対面の人に少し話しかけたい場合は「a minute(数分)」という言葉をつかいましょう。
例
【(数分だけ)お時間ありますか?】
ドアを出入りする時やエレベーターの昇降時に、他の人に先に道を譲る際には「After you.(お先にどうぞ)」と言います。欧米の男性は自分の後ろを歩いている女性にもまるでドアキーパーのように扉を開けて待機し、このフレーズを言う人がいるほどです。
初対面の人と交流をする時
Hi. What’s your name?【やあ、お名前は?】
出会っていきなり相手の名前を聞くのはマナー違反です。「あなたこそ誰なんだ?」と思われても仕方がありません。まずは自分の名前を名乗り、相手を安心させてあげましょう。また、自ら名乗ると相手もすぐに名乗ってくれ、名前を聞く必要がないことが多々あります。
例
【やあ、僕は田中 大介です。】
【やあ、僕はジョン スミスです】
What’s your job? 【仕事内容は何?】
仕事のことを聞かれたくないと感じている人は少なくありません。特に上記の質問は直接的であるため、非常に警戒してしまいます。仕事の内容によって社会的地位など、色んな事を判断されているような気さえもします。相手が大まかに答えられるような質問の仕方を心がけましょう。
例
【どんな業界の方ですか?】
勤務時間外であるオフの日や仕事後に、仕事の話をすることを「shop talk」と言います。これは店舗がある販売員だけでなく、誰もが使える一般的なビジネス英語です。「Let’s not talk shop here.(ここでは仕事の話はやめようよ。)」といった言い回しもできます。
相手の外見を褒める時
(褒め言葉に対して)No no… 【いえいえ…】
褒められた時に謙遜するということは、自分自身への謙遜ではなく、相手のセンスを否定することになります。もらった褒め言葉は「ありがとう」と素直に受け入れて良いのです。また、もらいっぱなしにならないように、すぐに相手にも褒め言葉を送りましょう。
例
【ありがとう。あなたのバッグも素敵ですね。】
(すべての人に対して)You have a big mouth. 【大きな口だね。】
白い歯を見せてニッコリとほほ笑むことは、大切なコミュニケーションツールの一つです。また、英語は口を横にしっかりと開いて出す音がたくさんある言語であるため、口元が魅力的な人は多いです。口元を褒める時は、直接口を褒めるよりも相手の笑顔を褒めるようにしましょう。
例
【笑顔がステキだね。】
You are skinny.【細いね。】
美意識は国や文化によって異なり、細いことが魅力的だ、という日本人の感覚が必ずしも相手を喜ばせるとは限りません。英語圏の国では健康的という言い方が適しています。
例
【素敵だね!】
【元気そうだね!】
You look tired. 【疲れているみたいだね。】
相手の努力や苦労をねぎらうのは、日本やアジア諸国の文化でしょう。そのため、英語には「お疲れ様」という言葉がありません。上記の文を言われると労ってくれているという思いやりは伝わらず、むしろ文字通りに「みすぼらしい外見だ」と言われているような気がしてしまうのです。このような場合はあいさつ文を気軽に投げかけ、近況報告をするのかどうかを相手に委ねるのが良いでしょう。
例
【調子はどう?】(参考:英語で挨拶をしてみよう!)
以下の事項は相手の外見に関することであり、言うこと / 聞くこと自体がマナー違反であるため、触れないのが賢明です。本人が気にしていることを、他人に言われて良い気がしないのは当然です。
- (背が高くない男性に対して)How tall are you? 【身長いくつ?】
- (女性に対して)You are big.【体格がいいね。】
- (女性に対して)How old are you? 【年はいくつ?】
- (すべての人に対して)Have you gained weight?【太った?】
- (すべての人に対して)You have a big nose.【鼻が高いね。】※
※鼻が高いは「high nose」「tall nose」という言い方はしません。小さな団子鼻の方がカワイイと思っている人はたくさんいます。
相手の個人的な情報を聞く時
Do you have a boyfriend / girlfriend? 【彼氏 / 彼女はいるの?】
この質問のまずいところは2点。まず、この質問をされることで自分に気があるのかな、と誤解されてしまいます。もちろん良く知っている相手への質問、または意中の相手へのアピールなのであれば問題ありません。次に、相手の恋愛対象が異性かどうかが分からないこと。近年、LGBT(性的少数派であること)をカミングアウトしている人は増えてきましたが、それでもまだ言えずにいる人たちもたくさんいます。男性に対して「彼女いる?」と決めてかかった質問の仕方よりも、お付き合いしている人がいるのかを探る質問の方が配慮ある質問と言えます。
例
【誰かとお付き合いしているの?】
Are you married / single?【結婚しているの? / 結婚はまだ?】
これも交際相手がいるのかどうかを聞く質問と同じ理由です。結婚したくても同性婚が認められていない国もまだまだたくさんあります。更に、欧米諸国では事実婚が好まれています。籍は入れず、同じ家で暮らし、子供も育てます。結婚の形が多様化している現代は「既婚・未婚」の二者択一ではなくなってきているのです。書類の記載などで聞く必要がある場合は上記のままで聞きますが、普段の会話では会話の流れで把握する、もしくは「Are you seeing anybody?【誰かとお付き合いしているの?】」と聞くことで「I’m married.【結婚してるの。】」と返ってくるかもしれません。
You should study harder. 【もっとしっかり勉強した方がいいよ。】
相手にアドバイスをする時に should を用いますが、内容によっては上から目線で言われているような響きになります。何かをお薦めする時は「You should go to Paris. It’s very nice.(パリに行くべきだよ。素敵なところだから!)」のように言われると説得力があり、効果的です。しかし、上記の例文を友達に言われるとあまり良い気がしませんね。それでも友達のためを思って厳しいアドバイスをする必要がある時は「had better」を使うと少し和らぎます。
例
【もっとしっかり勉強した方がいいかもしれないね。】
お金の話をすると非常に印象が悪いです。直接相手の個人情報を聞くことはもちろん、旅行中に現地ツアーガイドについ聞いてしまう人も良く見かけます。お金の話はできるだけしないようにしましょう。
- How much money do you make? 【収入はどのくらいなの?】
- How much is your rent / car? 【家賃 / 車はいくらなの?】
店員に話しかける時
A coffee, please. 【コーヒーを出してください。】
英語を習いたての時はドキドキしながら、ほしい物の後に「~, please.」と続ける言い方で英語を話すことに慣れていきます。しかし、pleaseは「~してください」という意味の命令文であるため、英語を話すことに余裕が出てきた人が連呼するとあまり良くない印象を与えてしまいます。少しずつステップアップすることでより良い言い方を身に付けましょう。
例
【コーヒーをもらえますか?】
I hate polo shirts. 【ポロシャツは嫌い。】
店員さんに薦められた商品が好みではなかった場合、はっきりと全否定をする「hate」は避けましょう。この単語は「忌み嫌う、憎む、嫌悪感を抱く」などといった意味があります。否定的な意見を述べる時こそ、オブラートに包んだ言い回しの出番です。
例
【ポロシャツはあまり着ないかな。】
【ポロシャツは好みじゃないな。】
It’s cheap. 【安っぽい。】
確かに「cheap = 安い」と学校で習います。自分が持っているものがとても値段が安いのだということをアピールする時に「It’s really cheap. It was only 5 dollars!(本当に安かったの。これ、たったの5ドルだったのよ!)」といった会話では使うことができます。しかし、店頭に並んでいる商品についてコメントする場合は「reasonable」と言うようにしましょう。
例
【手頃な値段だ。】
依頼やお誘いを断るとき
最後に「No」の使い方も見直しておきましょう。
英語を話す時はハッキリと意見を述べる必要があると思い、つい「No」を単体で連発してしまいがちです。しかし、日本語と同じで「いいえ」ばかり言うのはきつい印象を与えてしまう上に、不自然な会話になります。
「No」の代わりに以下のフレーズを使ってみて下さい。
- Would you like something to drink?【お飲み物はいかがですか?】
- I’m Okay, thank you.【大丈夫です、ありがとう。】
I’m good, thanks. 【大丈夫です、ありがとう。】
- Do you have a plastic bag?【ビニール袋はありますか?】
- Uh… sorry, I don’t. 【えっと…ごめん、持ってないや。】
Uh… not an extra one.【えっと…余分にないわ。(自分が使う分しかない)】
- Are you coming to the party next Sunday ?【日曜日のパーティーに来る?】
- I really want to come, but I can’t.【本当に行きたいんだけど、行けないんだ。】
Oh, I wish I could come.【あぁ、行けたら良かったんだけどね。】
まとめ
今回は英会話のマナーについて、まとめてみました。
少し脅かしてしまったかもしれませんが、これを読むことで英語を話すことを恐れないでくださいね。
基本的に日本人は好感を持たれています。
たとえ今回ご紹介した警戒フレーズを使ってしまったとしても、更に会話を進めることで徐々に「さっきの一言は失礼に聞こえたけど、きっと悪気はなかったんだろうな。」と理解してもらえるはずです。
今回学んだ好感フレーズは、初対面の人にこちらから話しかける第一声を、念入りに確認する際にうまく活用してみてください。
また、会話の中でズレが生じた時に、軌道修正をするヒントにもなれば幸いです。