突然ですが以下の単語をどう英訳しますか?

「Mottainai」

数年前にこの言葉は世界中に広がりました。この言葉の背景にある日本人の心が、世界で評価されました。この言葉にぴったりな英訳がなかったのも、世界に広がった理由の一つです。

英語を学習していると、英語では表せない日本語や、その逆の英語表現に出会うことは、少なくありません。私達日本人学習者にとって、どうも腑に落ちず、歯がゆいこの状況を打破するために、今回は英語と日本語の成り立ちを比較してみましょう。

英語と日本語の相違点

英語と日本語は、文法も発音の仕方も、全くの正反対と言っていいほど違います。このような異なる2つの言語を、ミラーランゲージ(鏡合わせの言語)と言います。

文法の違い

Michael likes this boat.
マイケルは このボートが 好きだ。

英文は、上記以外の語順では表せないのに対して、日本語は自在に順番を入れ替えても意味が変わりません。それは、日本語には助詞(~で、~に、~を、~へ)があるからです。

発音の違い

Michael とマイケルは発音が随分違います。Michael は “マイコー” に近い発音です。また、“boat=ボウt” は英語では息だけで語尾の “T” の発音をするのに対して、日本人の私たちは最後まで “ト” と音を出します。

文法や発音に限らず、この2言語の相違点を挙げればキリがありません。しかし、英語と日本語は完全に何もかもが違うわけではなく、似ている部分もあります。鏡合わせの英語と日本語の間にある共通点とは、一体何なのかを探求してみましょう。

2つのミラーランゲージの共通点

これほど異なる英語と日本語の共通点を探るべく、それぞれの言語の歴史を辿ってみましょう。現代の日本語は、主に3種類の言語から成り立っています。

日本語の起源

  • 和語(漢語が導入される前に元々使用されていた言語、漢字の訓読みにあたる)
  • 漢語(昔の中国語、漢字の音読みにあたる)
  • カタカナ語(主に西洋から来た外来語)

一方、英語は主にアングロサクソン語とフランス語を組み合わせた言語であり、時代の流れと共に他の言語の影響も受けています。

英語の起源

  • ラテン語(スペイン、ポルトガル語)
  • ギリシャ語
  • ゲルマン系言語(今の北欧・ドイツ付近)
  • ノルマン語(フランス語)
  • ケルト系言語(今のアイルランド)
  • 中東諸国の言語
  • 日本語など

つまり、英語と日本語の共通点とは、どちらも「色々な国・地域から言葉を集め、英語風/日本語風に味付けをした、ごちゃ混ぜ言語である」ことです。

英語の外来語例

曜日を表す Sunday, Monday, Saturday は、北欧神話の神様たちの名前から名づけられています。Tuesday, Wednesday, Thursday, Friday は、ローマ神話の神様が由来の単語です。

海を意味する Ocean の語源は、ギリシャ神話に登場する海の神様、オケアノス(Oceanos)。マカロンやエクレアのようなスイーツや、お土産を意味する souvenir はフランス語。

そして、日本語が由来の sushi, anime, futon も、今や立派な英語です。
 

日本語の外来語例

日本語には、同じ音を反復する言葉も多いのですが、これは太平洋に浮かぶ南国地域ポリネシアの影響を受けています。

また、「イクラ」はロシアから、「天ぷら」や「金平糖」はポルトガル語から来ています。他にも、「瓦」など、仏教伝来と共にインドから、「ワクチン」などの医学用語はドイツから、「ズボン」など一部のファッション用語や流行り言葉などはフランスから、といった具合に様々な国の言葉を輸入しています。

言葉と文化の入手ルート

なぜ、こんなにもたくさんの国や地域から言葉が入ってくるのでしょうか?

私達の国、日本も、英語が生まれたイギリスも島国です。昔から、他国からの侵略や、干渉とは、ある程度距離があるのに、言語という面では非常に影響を受けています。

では一体、どこからその言葉を仕入れたのでしょうか?言葉と文化の入手ルート、それは、「交易」です。

例え、島国で他国からの侵略や干渉とは距離があったとしても、私たち人類は、交易とは距離を置くことができないのです。

例えば、イギリスは、アイルランド、北欧諸国、フランス、地中海沿岸の国々と、長い歴史の中で交易をしてきました。大航海時代や、植民地支配を進めていった帝国主義の時代には、安い人件費と、高い利潤を求めて、インドや、エジプト、アフリカ諸国とも交易を行っています。他国を侵略したり、他国から侵略されたりの長い歴史の中で、文法やフレーズ、単語を仕入れていきました。

私たちの国日本も、中国、韓国などの近隣国と親密な付き合いがあり、物品だけでなく、文化や言葉の交流も多くありました。日本の縄文土器が、ポリネシアで出土したこともあります。

戦国時代には多くの大名たちが、スペインやポルトガルと貿易を行いました。江戸時代になって、鎖国政策が敷かれても、交易をスパッとやめることはできず、貿易相手国をかなり限定しての貿易が行われていました。

その積み重ねの中で、言葉も徐々に変化していき、今現在の私たちが使っているものになったのです。

日本やイギリスのような島国は、他の国々と離れているからこそ、ここまで多くの国と地域から、言葉を柔軟に取り入れて、日本風、英語風に味付けをする事が可能だったのかもしれません。そして今でも、沢山の言葉を他国と共有しています。

まとめ

言語は「混ぜご飯」のようなものです。白米(元々あった言語)に、外国産の具材(外来語)を入れることで新しい料理(言語)に進化しています。

ベースとなる言語や具材の種類・分量の違いにより、ちらし寿司、ビビンバ、パエリア、ジャンバラヤなど、独自の料理に仕上がっていきました。

輸入大国である日本は、特に英語圏からの外来語を多用しているため、たとえ英語学習をしたことがない方でも、既にいくつかの英単語を知っていると言えます。

英語をもっと身近なものに感じ、これからも続く言葉と文化の交易を楽しいものにしていきましょう。