仕事終わりにちょっと一杯飲みたいとき、あなたはどんなお店に行きますか?
格安でお酒が飲めるチェーン店の居酒屋?
それとも、雑誌やネットで話題の人気店?
私がおすすめしたいのは、味や接客にこだわった高級店や、常連が多く訪れる老舗の酒場。
酒場には、いろんな人が集まります。
仕事帰りのビジネスマン、定年後の余生を楽しむ老人夫婦、店主や女将・・・。
彼らの姿からは、ビジネスの上で知っておきたい、さまざまなスキルが見えてきます。
食べ歩き歴30年の達人、マッキー牧元氏は数々の酒場を渡り歩くなかで、沢山の人と出会い、彼らからビジネスの極意を学んだと言います。
そんな数々の極意がお店と共に紹介されているのが、「出世酒場-ビジネスの極意は酒場で盗め」。
酒場で学べるビジネスの極意とはいったい何でしょうか?
第一印象よりも、別れ際に気を使う
東京赤坂にある餃子の人気店「珉珉」。
このお店の女将さんが一番大切にしているのが、「別れ際の思いやり」。
特に従業員に対して、別れ際に掛けることばに気を使っているそうです。冬に調子が悪そうなときは、カイロを渡してあげることもあるのだとか。
言われてみれば、印象を良くしようと、初対面のときにたくさん気を遣うけど、別れ際のことばに気を遣うことってあまりないですよね。
でも、想像してみて下さい。
「今日はお話しができて本当に楽しかったです。」
なんて、別れ際に気の利いた一言をもらったら・・・
「また会いたい」という気持ちになりませんか?
著者はこのことを聞いてから、別れ際のことばに気を遣うようにしてみたそうです。
すると、相手のことを知ろうと思うようになり、相手の言葉をよく聞く姿勢ができたと言います。
私たちも、別れ際のことばを大切にしたいものですね。
クレーム対応時は、ゆっくり落ち着いて話す
北千住にあるお店「大はし」は御年八十数歳の親父さんが切り盛りしています。
彼はいつも、ゆっくりとした野太い声でお客さんに声をかけます。著者曰く、この野太い声が、客を潜在的に心地よくさせているのだとか。
著者はある日、取引先の仕事に穴をあけ、先方から激しく叱責されました。
人は叱責されると、動揺して声が高くなってしまいます。
でもそのとき著者は、大はしの店主の話し方を真似してみたそうです。
すると、ゆっくりと太い声で話すことで、冷静になり、相手が何について怒っているのか、怒りの要点が見えてきたというのです。
さらに、自分が落ち着いて話すことにより、相手の怒りも収まったのだとか。
以来、クレーム対応には「大はし」スタイルを活用しているそうです。
話し合いをスムーズに進めるためには、話し方に気を使うことも大切なのですね。
酒場の仕切りで、仕事の出来不出来がわかる
茅場町にある「ニューカバヤ」は、1000円以内でベロベロに酔えるお店、通称せんべろ酒場。
店内にはお酒の自動販売機があり、焼き鳥は自分たちで焼くというセルフタイプの酒場です。
このセルフタイプの酒場は、ぜひ新入社員や転入社員と一緒に訪れてほしい!
なぜなら、その場の仕切り方で仕事の出来不出来を垣間見ることができるからです。
まず、「今日は2000円以内で飲むぞ」とルールを決めて、肴の選択、酒の注文、鳥の焼きなどすべての権限を彼らに与えましょう。
どの肴を頼むのか。
どんなお酒を頼むのか。
お酒や肴の選び方で、相手の気持ちを思い量る心配り、会の進行をつつがなく取り仕切るセンスが見て取れるのだと言います。
また、決められた予算を無視してはいけません。
2000円の範囲内でどのようにお酒を楽しむか。
限度が近づいたとき、いかに雰囲気を壊さずにみんなに伝えるのか。
大切なのは、「決められた予算内で最高に楽しく飲むこと」。
これらは、ビジネスで一つのプロジェクトを進めるときと似ています。
「決められた予算内で最高のパフォーマンスをすること」
飲み会でうまく仕切れる人は、ビジネスの場においても進行役として上手に仕切れる人と判断できるのです。
将来、大きなプロジェクトを実現したいと考えている人にとって、セルフタイプの酒場は、仕切りのトレーニングの場として最適と言えますね。
経営者の気持ちで仕事をする
銀座のバー「らんこんと」のママ、長谷川滋子さんは銀座のホステスとして長年働いていた接客のプロ。
彼女はホステスの仕事を心から楽しみ、当時働いていたお店のママから人間の道をたくさん学んだそうです。
彼女はその後、男性バーテンダーのいるバーを10年間運営し、現在のバー「らんこんと」を運営しています。
彼女の元で働いていたバーテンダーの中には、現在自分のお店を持っている人もいるのだとか。
彼女は大学を卒業して一流企業で働く人よりも、彼らのことを尊敬していると言います。
そんな彼らに対して、彼女が諭していたことが2つあります。
「店の主人になったつもりでやりなさい」
この言葉はビジネスでも同じこと。
現在社員として働いているあなた、社長の立場に立ってみたことはありますか?
上司からの指示に従って、毎日同じ作業を繰り返すだけの働き方になっていませんか?
そんな人は、一度社長の立場に立ってみましょう。
経営者としての責任と将来のビジョンを持って働くことで、自らの発展とともに、会社の発展にもつながるはずです。
格安チェーン店には行くな!良い酒場の選び方
酒場はただお酒を楽しむだけでなく、ビジネスの学びの場でもあることを感じていただけたのではないでしょうか。
一度酒場に行ってみようかな・・・。と思われた方もいるのでは?
そんなあなたに、「良い酒場」の選び方をご紹介。
いつものように、適当なお店に入って適当にお酒を飲んでいるだけでは、ビジネスの極意を学ぶことはできません。
以下のポイントに注目してください。
店はこだわりを持った老舗か、高級店を選ぶべし
格安チェーン店が急増するなか、長年お店を続けられたということは、きっとお客さんを惹きつける魅力が隠れているはず!
著者は、30,40代の方はもちろん、20代の若い方も、授業料だと思って少し背伸びしてでも、高いお店に行ってもらいたいと述べています。
常連さんが多く訪れるお店を選ぶべし
お店に通い詰めた常連客の姿を観察することで、なぜお客さんがこのお店を訪れるのか、その理由が見えてきます。
このお客さんはどういう生活をしているのか?
このお客さんはどうしてここに来るのか?
お客さんのしぐさや表情をじっくり見てみましょう。
お店には一人で訪れるべし
お店の様子を観察するには、一人で行くのがベスト。
じっくり人間観察をしたり、お店のこだわりを探したり、店主とおしゃべりしたり・・・。お酒を飲みながらゆっくり考えてみましょう。
何度か訪れ、お店の魅力が見えてくると、「今度○○と一緒に来よう!」と自然と思えるようになるはずです。
お店の雰囲気、お店のこだわりを観察すべし
本書に登場するお店の中で、BGMにこだわりを持ったお店があります。音量も最適で、音楽がお客さんのおしゃべりとよく溶け合っている。
いつ訪れてもBGMが心地よいそうです。
実はこのお店、開店時と閉店時で、選曲や音量を変えていたのです!
店主は料理を準備しながら、お客さんの数や客層をチェックしてBGMを調節しているのです。
ポイントはお客さんに悟られてはいけないということ。
何度かお店に通って、普段は気づかないお店側の配慮を、ぜひ暴いてみてください!
店主、女将、お客さんなど、とにかく人を観察すべし
飲食店の方々は、日々お客さんに喜んでもらわなければならない宿命を背負っている。そのためには、まず何より誠実でなければならない。
著者はこのように述べ、この誠実さは現状に満足せず、常に進化の気持ちを持ち続けなければならない、そしてこれはビジネスにも通じるものだと述べています。
席についたら、店主や女将さんの振る舞いをじっくり見てみましょう。
彼らのお客さんに対する行動を観察すると、お客さん(相手)に対する配慮や、今まで積み重ねてきた努力が見えてくるはずです。
接客のプロから仕事の極意を学ぶ「出世酒場」
いかがでしたか?
ここまで紹介した極意をおさらいしておきましょう。
- 第一印象よりも、別れ際に気を使う
- クレーム対応時は、ゆっくり落ち着いて話す
- 酒場の仕切りで、仕事の出来不出来がわかる
- 経営者の気持ちで仕事をする
- 店はこだわりを持った老舗か、高級店を選ぶべし
- 常連さんが多く訪れるお店を選ぶべし
- お店には一人で訪れるべし
- お店の雰囲気、お店のこだわりを観察すべし
- 店主、女将、お客さんなど、とにかく人を観察すべし
また、ビジネスの極意だけではなく、「タベアルキスト」ならではの視点で語られる、おいしい料理やお店の話も見逃せません!
「良い酒場」探しにもってこいの1冊です!一度手に取ってみてはいかがでしょうか?