クライアントに対して、または社内でプレゼンテーションをするとき一番心配なのは「話の内容をうまく伝えられるか」ではないでしょうか?
プレゼンテーションの直前まで、一文字一句見落とさないように内容をチェックする方も多いと思います。
ですが、プレゼンテーションで最も大切なのは「話す内容」ではなく、「声」かもしれません。
「メラビアンの法則」という法則によると、人は他人の話を聞くとき、話の内容に影響を受けるのは7%で、残りの93%は声や態度によって影響を受けるというのです。
つまり、プレゼンテーションや接客時など、いろんなビジネスシーンで人に何かを話す時、話す内容よりも、態度や声を工夫することでより良い結果が期待できると考えられます。
目次
1. 声が仕事の結果に影響すると実感した体験談
2. プレゼンテーションを成功させる「声」は練習すれば習得できる
3. 大人数のプレゼンテーションに効果的な声「ミドルヴォイス」
4. 少人数のプレゼンテーションに有効な声「チェストヴォイス」
5. マイクを使ってプレゼンテーションをするときの注意点
【まとめ】プレゼンテーションの声を良くするには、自分の今の声を知ろう
1. 声が仕事の結果に影響すると実感した体験談
「たかが声でプレゼンテーションの結果がよくなるなんて、信じられない」
という方もいるかもしれません。
プレゼンテーションとは少し違うかもしれませんが、ぼくも実際に仕事で話し方の重要性を感じたことがあります。
声は大きければ良いというものではない
ぼくは学生時代、アルバイトで学習塾の講師をしていました。
その塾は最高7人までの少人数制で集団型の授業だったので、学校のように教室の前に立って授業をします。
アルバイトをはじめた頃、実際に生徒に教える前に、模擬授業というものをしました。
模擬授業では塾の講師の方が生徒役になって、ぼくがその講師の方に対して授業をし、終わった後に感想と評価を聞くというかたちで進行します。
ぼくの模擬授業の評価は、授業の進行に問題はなかったのですが、声の大きさを指摘されてしまったのです。
ぼくは大きな声でハキハキと授業をしていました。
声は大きく元気なほどよいと思っていたからです。
でも、畳8帖分くらいの教室で7人の生徒に対して話をするには声が大きすぎました。
生徒役の講師の方からは「声が部屋に響きすぎて聞き取りづらい」「声のせいで内容が頭に入らない」「声が大きすぎて頭が痛い。苦痛に感じる」と言われてしまったのです。
そのときは「大きな声で元気よく」を意識しすぎたあまり、相手のことやその場の環境にまったく配慮せずに、ただ声を張り上げていただけでした。
結果として、授業の進行はよかったのに、声のせいで評価が低くなってしまったというわけです。
声が良い人は高く評価される
一方、ぼくの次に模擬授業をした女性は声によって高い評価を得ていました。
彼女は普段話をしているときには特別なことは感じませんが、人前で話をするときは自然と耳に入ってくるような、心地よい話し方をする人です。
声に力が入りすぎておらず、かといって弱々しいわけでもなく、堂々と話をする姿が印象的でした。
彼女の場合、模擬授業のあと一番に「声がよい」と褒められていました。
とても聞き取りやすくて、話が理解しやすかったという評価を受けていたのを覚えています。
この体験を通じて、「人前で話すときに、声ってとても重要なんだな」と思いました。
2. プレゼンテーションを成功させる「声」は練習すれば習得できる
「声って、もって生まれたものだし、今さら良い声にするなんてムリじゃない?」
と思っている方も多いでしょう。
青山ヴォイス・メイクアップアカデミー代表の白石謙二氏の著書、『言葉と声の磨き方』によると、声のトレーニングをすることで誰でも何歳からでも話し方を改善できるというのです。
本書によると、声自体の良し悪しは、好みの問題もあるからどれが良いとか悪いとかを判断することはできないとのこと。
でも、「社会的に求められる良い声」というのはトレーニングをすることで近づくことができるのだと言います。
社会的に求められる5つの良い声
- 声量のある声
政治家や弁護士など強い思いを訴える人が持っていたい声です。安定した声量のある声の方が、相手に「熱意」が伝わります。なので、ビジネスにおいても、交渉する場面では声量のある力強い声の方が有利に進みやすいと考えられます。 - 明るい声
声は潜在意識にはたらくため、声が明るいことによって、その人自身が明るい人だと好印象を与えることができます。 - よく通る声
よく通る声は、話す方にとっても、聞く方にとっても心地よい声です。自分の意志を伝える時に適した声なので、プレゼンテーションや面接、電話対応などビジネスにおけるいろんな場面で使うことができます。 - 響く声
説得力抜群で、癒やし効果もある声。 - やわらかい声
包容力があって、周りの緊張感をほぐす効果があります。お坊さんのような優しい声のイメージです。
よい声を出すための基本トレーニング
よい発声をするために気をつけることを3つ紹介します。
1. 発声をよくするウォーミングアップ
身体がかたい状態では、うまく発声ができません。
身体、とくに上半身と表情筋を入念にほぐしておきましょう。
部位 | ウォーミングアップの方法 |
---|---|
表情筋あご |
|
舌 | 舌を左右に反転させるように大きめに動かす |
のど | 大きなあくびをする動作をする |
首 |
|
肩 | 両肩を前と後ろに同時にまわす |
2. よい声を出すための姿勢
内蔵を圧迫する猫背や、変な力が入る鳩胸の状態では、発声がうまくいきません。
- 猫背
発声のために必要な身体の各器官をうまく使えず、声量も落ちて、ハリのない声になってしまう。 - 鳩胸
良い姿勢を保っているつもりが、体を反りすぎてしまっている可能性が高い。
良い声を出すためには、発声のときに良い姿勢でいる必要があります。
良い姿勢を保つポイントは次の通りです。
- 両足を骨盤から肩幅くらいの広さに開く
- 背骨がまっすぐになるように保つ
- 頸椎がまっすぐになるように保つ
- 顔は正面を向き、目線はやや上向きくらいの高さを向く
- 両腕は身体に沿って「ゆるめて」垂らす
- 体重は「足裏の前方」にかけ、ひざはリラックス
3. よい声を出すための呼吸「腹式呼吸」
腹式呼吸は、肺の下にある横隔膜を下げ、肺が大きく広がることにより、たくさんの空気を取り入れることができる呼吸法です。
腹式呼吸は声量アップや発声の安定以外にも、「ストレス解消」「緊張感を和らげる」「脳の活性化」といった効果があるので、意識的にできるようになるとよいでしょう。
腹式呼吸は難しそうに感じますが、意識する部分を頭に入れておけばできるようになります。
複式呼吸のポイントは「息を先に吐く」こと。
ゆっくりと息を吐いて、腹筋が少し痛くなり、お腹が凹んでくるのを実感するくらい息を吐ききります。
息を吐ききったら腹筋の緊張を一気にゆるめましょう。
お腹は自然と元の位置にまで戻って、息が吸えた状態になります。
息を吐く動作に慣れたら、今度は息をゆっくりと吸うことを意識してみましょう。
お腹を徐々に緩めながら吸うのが大切です。
3. 大人数のプレゼンテーションに効果的な声「ミドルヴォイス」
発声の基本の次に、プレゼンテーションに効果的な声の出し方を紹介します。
プレゼンテーションは少人数に対して行うときもあれば、たくさんの人数に対して行う場合もありますよね。
だから、相手に届く声の高さを選ぶ必要があるのです。
遠ければ遠いほど、人数が増えれば増えるほど、普段の話し声より「少し高い声」、かつ「通る声」が必要です。
まず、大人数の前でプレゼンテーションや主張をするときは、ハリのある「ミドルヴォイス」が効果的。
ミドルヴォイスとは、自分が最も出しやすいゾーンの声で、「共鳴する」「声が響く位置」が顔の中心あたりになる声のことを言います。
自分の中で、一番通る声になり、少し離れた人に自分の言いたいことをはっきり伝えたいときに効果的な声なのです。
「ンー」とハミングして鼻の頭がムズムズするのが目安です。
ミドルボイスの出し方
このとき声を出す瞬間にのどが引っかかり、痛くなるような感覚があれば、のどに力が入っている証拠。
声を出すイメージを、相手に対して直線的ではなく、紙飛行機を投げるように、放物線を描くようにすれば改善されます。
声の大きさを調節するときは、テレビの音量を合わせるように徐々に大きくしていくと良いでしょう。
4. 少人数のプレゼンテーションに有効な声「チェストヴォイス」
プレゼンテーションの相手が目の前の二、三人の少人数が相手なら「やや低めの声」で、「響く声」である「チェストヴォイス」が有効です。
チェストヴォイスは低い声を出す技術で、声を出すときに胸のあたりを響かせるように話します。
自分にとって低い声だと感じたらそれがその人のチェストヴォイス。
目の前の人に対して、自分の発言の説得力を増したいときに効果的な声と言われています。
チェストボイスの出し方
チェストヴォイスは胸に口があるつもりで話しましょう。
イメージとしては、中尾彬さんの声マネをするときの感覚です。
少し顎を引くとより深みのある声が出ると言います。
チェストヴォイスは腹筋をあまり使わず、声がこもりやすいので、複式呼吸を意識しながらしっかり声を出すことが大切。
胸に手を当てて、発声したときに響いているかどうか確かめながら練習しましょう。
5. マイクを使ってプレゼンテーションをするときの注意点
プレゼンテーションや講演でマイクを使うときは、必ず事前にマイクテストを行うようにしましょう。
注意したいのは、自分の声の小ささやテンションの低さをマイクの音量でカバーしようとしないこと。
どれだけ音量を上げても声の弱さやテンションの低さは相手に伝わります。
自分でお腹からしっかりと声を出して、ちょうど良いくらいに音量をセットするとよいでしょう。
【まとめ】プレゼンテーションの声を良くするには、自分の今の声を知ろう
プレゼンテーションや講演をするときに、自分の声がどう聞こえているかを後から確かめる人は多くないかもしれません。
正直ぼくも録音した自分の声を聞くのは抵抗があります。
ですが、声を良くするためには、自分が現在どんな声で話をしているかを知ることも大切です。
一度、自分の声を録音して、話し方や声の出し方を聞いてみましょう。
また、自分で発声のトレーニングが難しいという方はスクールに通うのも方法のひとつです。
『言葉と声の磨き方』には、発声練習要のCDもついているので、本書と合わせて利用すると大変効果的。
プレゼンテーションの成功率を高めたいという方は、ぜひ読んでみてください。