みなさんこんにちは!カツオです。
前回は『本を読む本』に学ぶ、読解力をつける4つの読書レベル(前編)「初級読書」と「点検読書」と題して、『本を読む本』で紹介されている「初級読書」と、「点検読書」について紹介しました。
今回はその後編で「分析読書」と「シントピカル読書」について説明したいと思います。
前回が一般的に身に着けておきたい読書法だとすると、今回の読書法はより深く考察したいときに必要な読書法だと言えます。
「分析読書」と「シントピカル読書」をマスターすれば、ますます読解力をつけることができるでしょう。
- 第三レベル「分析読書」本を徹底的に理解する読書法
- 第四レベル「シントピカル読書」複数の本を集めて答えを探す読書法
- 本の知識を自分のものにするなら「分析読書」と「シントピカル読書」
1. 第三レベル「分析読書」本を徹底的に理解する読書法
「分析読書」の特徴は、一冊の本を徹底的に分析するという点です。
分析読書は3つの段階に分けて行います。
- 第一段階「何についての本であるか見分ける」
- 第二段階「本の内容を理解する」
- 第三段階「著者の考えを吟味する」
それでは、各段階について詳しく見てみましょう。
第一段階「何についての本であるか見分ける」
「読者は、いま読んでいるのがどんな種類の本かを知らねばならない。これを知るのは早いほどよい。できれば読みはじめる前に知る方がよい」
本を読む前に本の種類を知っておきたい理由は、自分の目的によって読むべき本は違うからです。
「本の種類くらいタイトルを見ればわかる」
という方もいるかもしれませんが、本が溢れている現代では、題名や見出しだけでは本の種類がわかりにくくなっているのが現状。
たとえば『ルソーが見た世界』というタイトルの本があったとしましょう(実際にはありません)。
この本にルソーの思想について書かれていれば、この本は「哲学書」になります。
でも、この本にルソーが生きた時代の出来事について書かれていれば、この本は「歴史書」になります。
哲学は思想(考え方)を述べているのであり、歴史は昔あった事実を述べているので、それぞれ全く別物です。
『ルソーが見た世界』がどんな種類の本なのかは、タイトルだけではわかりません。
だから本を読む前に中を見て、本の種類を見極める必要があるのです。
本の種類を見極めるときは前回紹介した「点検読書」が役に立ちます。
次の点に注目しながら、本の種類を見極めましょう。
1. 本を分類する
今から読む本が、フィクションなのかノンフィクションなのか、小説なのか教養書なのか、教養書のなかでも、哲学、歴史、科学、心理学など何についてか書かれている本なのかを分類します。
2. その本全体が何に関するものなのかを、できるだけ簡潔に述べる
著者の言いたいことがわかれば、その本の主題や目的を発見することができます。
そのためには、本の全体の内容を2~3行の文にあらわしてみるのが効果的。
本の内容をなんとなく理解したけど、言葉にできないのでは理解したとは言えません。
3. 主要な部分を順序よく関連づけて、その概要を述べる
本全体の内容は、複合的な要素が集まっています。
どのような要素が集まって、ひとつの内容を述べているのかを分析しましょう。
分析の方法は次の通りです。
(一)著者の構想は五つの主要部分に分かれている。第一部はこれこれについて、第二部はこれこれについて・・・・・・第五部はこれこれについて。
(二)第一の主要部分は三つに区分できる。第一の区分はXについて、第二はYについて、第三はZについて。
(三)第一部の第一区分で、著者の述べている要点は四つある。第一はA、第二はB、第三はC、第四はD。
このように、内容をどんどんと掘り下げていきます。
4. 著者が解決しようとしている問題が何であるかを明らかにする
本には必ず問題提起があって、著者が導き出した答えが書いてあります。
本によっては、答えのみが書いてあり、著者が問題としていることが書いていないこともあります。
その場合は、著者が解決しようとしている問題について明らかにしなければなりません。
本全体の問題提起はもちろん、本を構成する各要素にも問題提起があれば、それもきちんと認識しておく必要があります。
ここまでが、「分析読書」の第一段階「何についての本であるか見分ける」です。
第二段階「本の内容を理解する」
この段階で大切なことは、著者の意見に耳を傾けること。
まだ著者を批判したり、読者の主張と比べる必要はありません。
著者の言いたいこと、意見は何なのかを理解するよう努力しましょう。
内容理解のためのポイントは4つあります。
1. キー・ワードをみつけ、言葉の意味を正確に捉える
内容理解のためにまず大切なことは、本に登場する重要語(キー・ワード)を見つけ出し、単語のあらわす意味を正確につかむことです。
ポイントは言葉の使い方について著者と折り合いをつけるということ。
著者が意図する単語の意味と、読者が考えている単語の意味がズレていたら、本を理解するのが難しくなります。
たとえば「読む」という単語にしても、なんでもよいから読む「一般的な読書」があれば、知識を増やす「教養のための読書」や、自らを高める「啓発のための読書」もあります。
この「読む」の使い方が、著者と読者で違う場合、読者は著者の言いたいことを理解することはできません。
ですから、読者は言葉の使い方について著者と折り合いをつける必要があるのです。
読者が読み間違えないように、単語の意味について詳しく説明してある場合は読みやすいですが、そうでない場合も多くあります。
2. 重要な文を見つけ著者の言いたいことを把握する
単語レベルでの折り合いがついたら、今度は文での折り合いをつけていきましょう。
あることがらについて著者自身の考えがどうであるか、またはその考えに至った理由を明確に捉える必要があります。
傍線を引くなど印刷上の工夫があればわかりやすいですが、大抵の場合は読者が自ら探さなければなりません。
著者の命題は、はじめや結論に書かれていることが多いため、本全体のはじめと結論、各章のはじめと結論をよく読むことが大切です。
3. 一連の文の中の著者の論証部分を取り出す
本文には、実際にあった事実やデータ、予備知識が書かれている部分と、著者の考えや主張が書かれている部分があります。
その中で、著者主張部分だけを取り出して、組み立ててみたら、著者の言いたいことが分かります。
4. 著者が解決した問題と、解決できていない問題を知る
分析読書の第一段階の最後で、著者が解決するべき問題を明らかにしました。
その後、分析読書の第二段階で問題の答えになる著者の主張を分析しましたが、この分析を通して著者が解決できた問題と、解決できなかった問題を見定めることができます。
さらに、問題が解決できなかった場合、著者自身が解決できなかったことに気がついているかどうか判断することも大切です。
第三段階「著者の考えを吟味する」
第三段階は、読者自身が著者と議論していく段階です。
著者の考えや主張に共感する場合もあるかもしれませんが、なかには著者の考えに疑問を感じたり、反発する場合もあるでしょう。
著者の考えに対して批評をするのはかまいませんが、ただ闇雲に批判してはいけません。
批評をするにあたっての一般的な心得と、注意事項を紹介します。
- 「概略」と「解釈」を終えないうちは、批評にとりかからない
- けんか腰の反論をしない
- 批判的な判断をするときは、十分な根拠をあげる。また、知識と単なる個人的な意見とを、はっきり区別する
次の4つの点について明らかにする必要があります。
- 著者が知識不足である点
- 著者の知識に誤りがある点
- 著者が論理性に欠ける点
- 著者の分析や説明が不完全である点
特に「批判をするときの注意事項」1、2、3が立証できない限り、著者の主張にある程度賛同することになります。
第一段階から第三段階までしっかり行うことができたら、「分析読書」完了です。
第三段階まで行うと、その本について十分理解できるようになるでしょう。
2. 第四レベル「シントピカル読書」複数の本を集めて答えを探す読書法
第一レベル「初級読書」、第二レベル「中級読書」そして第三レベル「分析読書」は、一冊の本を読むときの読書法でした。
次に紹介する「シントピカル読書」は、同じテーマに関する本を複数を集めて読む読書法で、『本を読む本』の特徴的な読書法です。
たとえば、「効率よく読書をする方法が知りたい」と思い、読書術に関する本を買いに本屋さんに行くとしましょう。
本屋さんに行くと、「読書術」に関する本がたくさん並んでいます。
その中からひとつの本を選んで読むのも良いのですが、そうすると「読書術」に関するひとつの考え方しか知ることはできません。
ですが、同じテーマの本を2冊以上読むことでひとつのテーマをあらゆる方向から見ることができます。
このようにシントピカル読書は、2冊以上の本を読んで読者が求める答えを導き出すことを目的とした読書法なのです。
シントピカル読書の方法
シントピカル読書は次の手順で行います。
- 自分が知りたいこと(テーマ)を決める
- テーマに関連した本を2冊以上準備する
- 自分が知りたい部分をピックアップしていく
- 具体的な質問をしていく
- 各本の論点をまとめる
- 自分なりの結論を出す
1. 自分が知りたいこと(テーマ)を決める
興味があることや、知りたいこと、悩みなどからテーマを決めます。
2. テーマに関連した本を2冊以上準備する
テーマが決まれば、それに関する本を2冊以上準備します。
このときに点検読書が役に立つでしょう。
主題や目次などから本の内容を確認し、主張が比較できるような本を選びます。
内容が似ている本は2冊以上用意する必要はありません。
3. 自分が知りたい部分をピックアップしていく
シントピカル読書は、あくまでも自分が知りたいことを突き詰めていくのが目的であって、本全体を理解することではありません。
自ら選んだ本の、さらに必要な部分だけをピックアップして読みます。
4. 具体的な質問をしていく
自分が知りたいことについて、それぞれの本に問いかけていきます。
この時点で、ひとりの著者の意見に激しく同意したり、反発したりしてはいけません。
ここではあくまでも客観的に読み、著者の意見を正しく読み取ります。
質問をするときは、選んだ本全てが答えられるような共通の質問を投げかけるのがポイントです。
5. 各本の論点をまとめる
質問に対するそれぞれの意見を書き出していきましょう。
各本の意見がそろったら、それぞれの本の意見を比べてみます。
意見を比べながら、
「どんな意見があるのか」
「どんな意見が多いのか」
「自分はどの考えに近いか」
などを見ていきます。
6. 自分なりの結論を出す
各本の意見を比べながら、自分なりの答えを導きます。
注意するべきことは、各本のうちどれが一番良い本かを選ぶのではなく、それぞれの本から得た意見を総合的に見て、自分が納得のいく答えを導き出すことです。
3. 本の知識を自分のものにするなら「分析読書」と「シントピカル読書」
「分析読書」と「シントピカル読書」について紹介しましたが、
「本を読むとき、正直ここまでできない・・・」
と思った方も多いでしょう。
「分析読書」も「シントピカル読書」も全ての読書でやる必要はありません。
「チョット知りたいだけ」とか、「最近話題だから読んでみた」というときは好きなように読みましょう。
ただ、「この本を徹底的に理解したい!」とか「疑問を解決したい!」というときは、ぜひ「分析読書」と「シントピカル読書」を実践してみてください。